淡路島がお香の産地であることはご存じでしょうか。淡路島の線香の生産量は日本一を誇ります。香りの起源発祥の地である淡路島にてお香づくり体験ができる「薫寿堂さん」に取材に行ってきました。
目次
淡路島がお香の産地となった歴史
淡路島がお香の産地となった歴史は、日本書紀に記されています。西暦595年淡路島西岸に2メートル以上の流木が漂着しました。島民たちはただの流木だと思い、ほかの焚火と一緒に燃やしました。ところが、その煙は素晴らしい香りを放ち、その流木を朝廷に献上しました。このことが聖徳太子の目に触れ、太子はすぐにそれを「沈香木」と見抜いたといわれています。その「沈香木」は今もなお、淡路島の枯木神社に祭られています。
淡路島でお香づくりが始まったきっかけ
昔の淡路島の冬は、波風が高く漁師の方も漁に出ることができなくなってしまうほどだったそうです。淡路島西海岸エリアには、漁村が多く漁師の方が多く住んでいます。冬には仕事ができなくなってしまうことから、何か淡路島でもできる副業はないかと探していたそうです。
約170年前、江井に住んでいた田中辰蔵さんは、大阪の堺へ行き、お香づくりと出会いました。お線香の作り方を覚え、職人さんを連れて淡路島へ帰ってきたことが淡路島でお香づくりが広まったきっかけだといわれています。
なぜ淡路島でお香づくりをしているのか
淡路島は、雨が少ない土地です。そのため、天然乾燥をさせるモノづくりをする地として最適だといわれています。近隣の姫路ではマッチづくり、赤穂では塩づくりが盛んでこれらもすべて天然乾燥をさせるモノ作りです。
薫寿堂さんのお香づくりのこだわり
働く環境について
薫寿堂さんでは、30年ほど前から毎朝30分から1時間の環境整備を行っています。大切なご先祖様をおまつりする際にお使いいただくものをつくっているため、つくる場所もきれいでないといけないという想いから、長年続けられている取り組みなのだとか。モノづくりへの姿勢を感じるお話を伺えました。
使用する素材について
使用する素材にもこだわったモノづくりをされています。薫寿堂さんでは、環境に優しいモノにこだわり、雑木や間伐材からできた粉を使用してエコ線香を作っています。普段であれば捨てられるものを活用し、お線香の資源料としています。出来上がるモノは、少し表面のざらつきはあるものの、香りはほかの賞品と何も変わらず、使用面においては影響はないとのこと。環境にも人にも優しいお線香ですね。
商品開発について
お線香というと、お葬式やお寺を想像してしまう人が多くいると思います。薫寿堂さんでは、お香の楽しみ方や使い方をもっと広めていきたいと考え、火をつけずに使用できる商品や、煙が少なく壁が汚れにくい商品などを開発されています。煙が少ないお線香は、薫寿堂さんが初めて作ったそうです。「どのような商品をお客様は求めているのか」常にその視点で商品開発をしているとお話ししてくださいました。また、薫寿堂さんは商品をご購入いただいたお客様に「ご愛用感謝券」をお渡ししております。「ご愛用感謝券」を薫寿堂さんに送り返すとさらに商品を送る仕組みで、お客様は商品に対しての感想やコメントを添えて感謝券を返送して頂くことが多く、そこから「お客様の声」を拾い上げ、それをまたモノづくりに生かす努力をされていました。
テロワール体験 薫寿堂さんのお香づくり
お香づくり体験は、およそ40分ほどで体験でき、小さなお子様から大人まで気軽にご参加いただける体験アクティビティです。
色は3種類から選ぶことができ、香りも7種類から選べます。数名一緒に体験をした際には、色を混ぜたり、香りをカスタマイズしたりすることができるので、楽しみ方の幅も広がります。
選んだ粉に水を入れていくと、だんだん色が変化してきます。少し力を加えながら混ぜていくと粉が固まっていきます。これは、椨の木の皮に粘り気によるものです。
粉がまとまってきたら、棒を使用して均一の厚さに伸ばしていきます。伸ばして折りたたんでを繰り返すことで、色ムラや香りのムラをなくすことができます。
全体的になじんできたら、型を取っていきます。隙間を埋めるようにして、好きな型にくりぬく作業はクッキーを作るみたいで、お子様も楽しんで取り組めそうです。
型取りが終わったら段ボールの上に載せていきます。これらを3~4日直射日光の当たらない場所で乾燥させたら完成です。
商品ができるまで
①調合
椨の木の皮や、糊、香りなどいろいろな成分を調合する過程です。詳細は企業秘密です。
②混錬
お線香を練る過程です。粉と香りの原料を調合し、約70℃のお湯を入れて粘土になるまで練っていきます。約20~30分ほどかかるそうです。1回の混錬で80㎏程練り、これで3000箱ほど出来上がります。練り上げたものは、10㎏程の塊にして、常温になるまで一晩ねかします。
③成形
お線香の形にしていく過程です。機械を通して粘土状の原料がお線香の形になって出てきます。できるだけまっすぐになるように両端は垂らし、一定の寸法に切りそろえていきます。切り落とした切れ端も、再生します。
④乾燥
お線香を乾燥させ、製品に仕上げる過程です。室温30℃、湿度40%の乾燥室で一日乾燥させます。乾燥しきったものは、少し長さが収縮するそうです。
⑤検品
乾燥が終わったお線香の検品を手作業で行います。曲がったり、折れたりしているものを取り除いていきます。
⑥箱詰め
検品されたお線香を箱に入れたり、束にしたり商品に合わせて詰めていきます。
会長 福永様が伝えたい想い
昔、日本人は食文化の影響により体臭が少なかったことから、ヨーロッパなど世界各国に比べると「香りを楽しむ」という習慣があまりなかったそうです。そのことから、お香と聞くと仏教やお葬式の印象が強いとおっしゃっておられました。しかし、現在では日本でも世界各国の食に触れる機会ができ、なんでも食べるようになったので体臭にも変化があり、もう少し香りを楽しむ機会を提供したいと考えているそうです。福永様は、お香づくりを通してお香に対してのイメージを変えること、そして香りを楽しむ機会の提供たしたいと考えているとお伺いしました。
また、「お香づくり体験」を通して、淡路島で生まれ育った人が「淡路島でどんなモノづくりをしているのか」や、「淡路島って何が有名なの」と聞かれた際に、魅力を発信していけるように楽しかった体験として覚えてもらいたいとお話しいただきました。
お香づくり体験は、約20年前阪神淡路大震災の後にスタートしました。建物の立て直しの際、「もっと気軽に見学していただけたり買いに来ていただけるようにしたい。そして、同時に楽しんでお香づくりを体験してもらえるスペースを作りたい」という想いから、お香づくり体験を実施しているそうです。
アクセスや詳細について
- 住所 兵庫県淡路市多賀1255-1
- 駐車場 無料駐車場(普通車15台、大型バス6台)
- 電話番号 0120-756-583
- WEBサイト https://www.kunjudo.co.jp/
- お香づくり体験 1,000円(税込)(ショールームでご利用いただける300円お買い物券付)
※お香づくり体験は事前予約をお願いいたします。
さいごに
今回の取材では、製造過程からお香づくり体験、そして淡路島でのお香の歴史などたくさんのお話をしていただきました。薫寿堂さんでは、お供えに使用するものだけでなく、新しいお香の楽しみ方や、おしゃれで気軽に試せるお香など、幅広い商品開発に取り組まれております。「お香」のイメージを覆す商品にたくさん出会わせていただきました。皆さんも淡路島に来られた際には、是非お立ち寄りください。
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